骨まで愛して

2007.5.3

 私の実家は兵庫県です。八百屋や魚屋に並ぶ食材は、東京とは、まったく違います。特に驚いたのは、捕れる魚の種類です。兵庫県にいると鮭は高価な割りに美味しくなくて、ほとんど、食べることがありませんでした。そのかわり、日常的に食卓に登場するのは、舌びらめやかれい、ひらめなどの白身の魚。鯛も旬であれば、天然のものが手ごろな値段で店頭に並びます。桜が咲きはじめて、「そろそろ、鯛の季節だなぁ。」と思っていたら、実家から天然の桜鯛が届きました。
 まず、身は新鮮なうちにお刺身でいただき、アラは、塩を多めに振って、カブト焼きにしました。すっかり平らげたカブト焼きのお皿を目の前にして、食い意地のはった私の頭によぎったのは、「まだ、スープにしたら食べられるんじゃないか・・・?」という考え。舐め舐めした魚のアラをもう一度鍋に戻して煮るなんて、レストランではできないけれど、家族の中でやるのなら、火も通すしオッケーですよね。
 早速、食べ残したアラを、昆布だしの中に投入。お酒を多めに注いで、火にかけます。ふつふつしたら弱火で煮出すこと15分。だんだんスープが白濁してきて、豚骨ならぬ、魚骨のスープっぽくなってきました。
 試しに味見をしたら、一度焼いた鯛の香ばしいかおりと骨からでた、うまみ、塩焼きにしたときの塩加減で、もう、何も足す必要の無いほど、美味しいスープになっています。 豆腐と薬味を加えて、一才6ヶ月の娘に与えたところ、「オイチ。オイチ」と言いながら、お椀一杯を一気に食べきりました。「私って天才かも!」と調子に乗って娘と夫と3人で鍋一杯のスープを完食してしまったのでした。
旬のそれも天然の食材の力ってすごいなあとあらためて実感します。中国医学では旬のものには「気」が宿るといいますが、旬の桜鯛は「気」のパワーに満ちていて、思わず骨までしゃぶりつくしてしまいました。
骨を捨てずに使い切れて、鯛の命をすべていただいた気がする、なんだかとっても幸せな夕食になりました。