豆腐は万能選手

2008.8.12

このごろ、物価が上がって、お肉もお魚も高くなった。安いお肉の代名詞のひき肉も、決してリーズナブルではないし、夏には一山で売られるするめイカも今年は、不漁なのか、それなりのお値段だ。生鮮食料品売り場で、栄養があって、おいしくて、家計にもやさしいもので、なおかつ、安全な食材を買おうということになると、けっこう大変だと思う。
 今年の私の薬膳の講座では、植物性の食材を中心にして、メニューを組み立てているので、豆腐がよく登場する。試作のために、以前より豆腐を使う機会が増えた。使ってみると豆腐の底力の驚いてしまう。
 江戸時代のレシピ本で「豆腐百珍」というのがあって、豆腐を使ったレシピが100個、紹介されている。イタリアンや中華料理のバリエーションがない江戸時代で100もレシピが作れるのさから、今の時代なら、いくらでも作れるかもしれない。肉の変わりにメインにもなるし、野菜として使うこともできる。ドレッシングにも化けるし、デザートを作ってもおいしい。
 
 先日の土用の丑の日。うなぎの蒲焼きの代わりに、作ったのが、“精進かばやき”だ。精進料理の昔からの一品で、水切りした豆腐を裏ごして、大和芋とあわせ、海苔に乗せて、揚げ焼にする。それを甘めのツメで煮て、ご飯に乗せる。
 作ってみると、蒲焼きというより、大根餅みたいな食感だった。娘には好評で、「もちもちだ~!!」と叫んで、大喜びで完食した。鰻をあまり食べさせてもらえない我が家で育った娘は、将来、本物のうな丼を食べて、どう思うだろうか・・・・。
 次に作ったのが、トマトのジャージャー麺。ジャージャー麺のひき肉の代わりに、豆腐を使っている。トマトで甘みを出したら、乙な味になった。
 これも娘は、「チュルチュル、おいしいね~」と完食。母親の実験料理に付き合ってくれる、いい子に育ってくれて、ありがたい・・・・。
 豆腐はもともとは、精進料理で使われた、高級食材だった。使いやすく、豆に比べると格段に吸収がよく食べやすいので、江戸時代には、一般に普及した。薬膳でも、体に毒を作り出さず、栄養価が高く、また、体液を増やす食材として頻繁に使われる。女性のホルモンバランスにも良くて、私の生徒さんでも、生理が止まっていたのに、毎日豆腐と豆乳を口にするようになって、生理が始まったひともいる。
 そう、豆腐は
栄養があって、おいしくて、家計にもやさしくて、国内産の原料の安全なものを選びやすい。悪いことがあまりない、万能選手なのだ。
 食事に肉を使わなくてもいい。なんて思わないけれど、豆腐を活用すると、かなり肉の頻度を抑えることができるのは確実だ。そんなわけで、我が家の食卓に豆腐が登場する回数は、これからも増えそうだ。