私たちの前にあるものは
鍋とお釜と 燃える火と

それらなつかしい器物の前で
お芋や 肉を料理するように

深い思いをこめて
政治や経済や文学も勉強しよう

それはおごりや栄達のためでなく

全部が
人間のために供せられるように

全部が
愛情の対象あって励むように

石垣りん(1920-2004)
『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』より