2004.8.23
彼女が最初に話しかけてきたのは、4年前の8月、ちょうど今時分だったと思う。姫路で薬膳のデザートとお茶の茶房を友人と一緒に立ち上げてから1年半。客足は順調だったものの、私は実家の薬屋の仕事を平行して続けていたため、生活は多忙を極め、その4月に過労で入院したばかりでした。そして、私の入院の負担からパートナーである友人は、ストレスで不整脈を発症していたのでした。
私は、とても疲れていました。みんなが病気になる前にリラックスに来てもらうスペースとして、茶房を作ったはずなのに、スタッフが病気だらけじゃ、何にもなんない・・・。何のためにやってんだろ・・・。
開店前の朝のひととき、掃除と仕込みをひととおり終えて、店の中心にある半2階への短い階段に腰掛けて、ひとり、思いにふけっていました。 「やめるなら、今しかないよなぁ・・・」
そのとき、「もういいんじゃない?」という声とも音ともつかない言葉がふってくる感じと、誰かがぴったり私に寄り添う感覚を覚えたのです。
「だれ??」辺りを見まわすと、私の座る階段の端に身丈30cmほどの小さな観葉植物の鉢がありました。彼女が話し掛けていました。
瞬間、すべてふっきれたような気がしました。「店を閉めよう。もう一度最初に戻ってやりなおそう。」
私はその日のうちに、2ヶ月後の10月31日に店を閉める事を決めました。
それから4年たって、私は東京にいて、そこに【ドナ】と名づけて彼女も一緒にいます。
植物には、目に見える植物としての体の周りにエーテル体と呼ばれる周波数のちがう目に見えない体があり、動くことのできない植物はエーテル体を通じて1種のパルスのようなもので、お互い連絡をとりあっていあるといいます。
人間も、物質的な体だけでなく、エーテル体・アストラル体という体を持ちます。多分、私と【ドナ】は、エーテル体を通して会話を交わしたに違いないと思うのです。私は、あの頃、非常事態の中で回線が違うモードになっていたように思います。毎日、疲れているのに、目に映るものはとても美しくキラキラ輝いて見えていました。その鋭敏になった感覚で、【ドナ】の声を受信できたのかもしれません。
店のクローズは、スムーズに運び、迅速な判断だったと評価する向きもありましたが、本当は【ドナ】の教えてくれたタイミングに従っただけなのでした。
以来、4年前のようなビビッドなコミュニケーションは私達にはなく、【ドナ】は、私の「大きくなれよ~」「いっぱい食べろ~」という言葉に素直に反応して、いつの間にか身丈1メートルを越す巨漢に成長しています。
「ドナ、次の非常事態のときも助けてね。」と、下心いっぱいに、米のとぎ汁をかける毎日です。