2023.6.22
先日、料理の師匠のお家にお邪魔してきました。
師匠は野草料理が得意。
80歳を超える年齢で、男性ながら1日3食のご夫婦二人の食事を
すべて作られて
時に、私のような客人に料理を振舞われる
師匠の食への考え方、常に自然とともにある人生の楽しみ方や生き方も学ばせていただくことが多いです。
利根川の河川敷で、初夏に育つ野草を一緒に摘みました。
ゆったりした川の流れを眺めながら
「クローバーの若い葉はかき揚げにするとおいしい」
「昼顔の花も食べられますよ。」
「アカザは、ほうれん草のような味で旨味があります。」
とひとつひとつ教えてもらって
足元に目を凝らしながら摘んで行きます。
歩くこと2時間ほど。
袋の中にはたくさんの野草が収穫できました。
オオバコ
ヒルガオ
クローバー
カンゾウ
クコの葉
アカザ
桑の新芽
そして
6月限定の桑の実も!
近くの温泉で汗を流したら、先生のご自宅で野草クッキングの開始。
天ぷら、和え物、おひたし、甘酢漬け、餃子など次々作っていく中で
桑の葉の料理になりました。
青々した桑の葉の新芽だけを摘んだものを
茹でてから刻みます。
「先生、これはどんな味付けにしたらいいですか?」
「白和えにするので、胡麻をしっかりすったら、味噌、砂糖を加えてください。」
少し固めの和え衣になったので、
「昆布だしで伸ばしますか?」
と訊いたら、
こんな答えが
「たぶん、料亭で食べるなら、昆布だしで伸ばすんですよ。
でも、摘み草では使わないです。
昆布やかつおのダシのうま味で
野草のデリケートな旨味がわからなくなってしまうから。」
すり鉢で豆腐をすり、味噌、砂糖、すりごまを加えて
茹でた桑の葉加えて、盛り付けます。
一口いただくと、何とも言えないほのかな旨味と優しい桑の青い香りが
口の中に広がります。
そして、若い桑の葉独特のオクラのようなぬめりも。
「先生、この料理はダシを入れないが正解ですね!」
「摘み草料理は、野にある野草そのものの姿や味をいかに楽しむかだからね。」
野草料理を味わった後は、師匠が打った十割ソバ
かつおとアゴの出汁がしっかり効いたそばつゆが添えられています。
「先生、ソバはやっぱりこれくらい骨太なダシがおいしい!」
「ここは出汁をケチったらいけないところ。」
摘み草料理のように、ダシを使わずシンプルに料理する方法も魅力的だけれど、
それだけだと味気なくなってしまう。
時に、旨味たっぷりで、豊かさを満喫するような料理だって楽しみたい。
大切なのは、「どちらが良い」ということではなくて、
「どちらも楽しめる感性」が自分にあること。
それは、幅や余裕と呼ばれたりするものかもしれないと思うのです。
私が中国医学を愛しているのは、自分にそんな「幅と余裕」を与えてくれるから。
世の中で通用している固定観念や常識だけで生きるとしたら
それはとても息苦しい世界になってしまう。
中国医学は、「他に道がない」と見えることろにも
常に「裏道」や「迂回路」があることを教えてくれて
違う視点があることに気づかせてくれます。
気が付くと、もうとっぷり日は暮れていて
おいとまする時間が来ていました。
振り返ると、床には師匠が食材を入れていた袋が
そこら中に散乱しています。
奥様が言います。
「料理に夢中になると、そこら中に袋を捨てちゃうの。
いくら言ってもゴミ箱に入れてくれないのよ~。」
すごくきちんとしているように見えるのに
こんな愛らしい一面があるのも師匠の幅でもあるんですね(o^―^o)
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