マニュアル

2006.5.28

私の気分転換のひとつが、喫茶店でのお茶。原稿のアイデアや新しいレシピを考えるとき、喫茶店の窓際の席に座り、お茶を目の前にして、頭の中を空っぽにすると、映像の断片や、原稿のはじめの書き出しのワンフレーズが「するする」という感じで降りてきたりします。特に煮詰まって、何も思い浮かばないときは、必ずお世話になりなす。
ところが、昨年の10月に娘を出産して以来、喫茶店でくつろぐのが難しくなりました。喫茶店って、お客のみなさん、静かにひとりの時間を楽しんでいます。そこに娘を連れて行って「ワーッ」とか「ふぇーん」とかなってしまったら、はた迷惑きわまりないし・・・。でも、続けている連載の原稿は休めないし・・・。喫茶店に行きたい!
以来、私が行くようになったのは、家の近くの「エクセシオールカフェ」。適度に、ざわざわしていて、窓も大きくて、ベビーカーも嫌がられません。その上、オフィスビルの中にあるので、朝の10時ぐらいに訪れると、お客もまばらで、心置きなくくつろげます。
3日おきぐらいに通っていたところ、同じ300円ほどのコーヒーの味が、作る人によって違うのに気づきました。店長らしき男性が淹れたものは、すごく美味しいのです!それ以来、彼が機械の前に立っている日は、「ラッキー!」とうれしくなります。不思議ですよね。この手の店のコーヒーってきちっとマニュアルがあるし、作るところを見ていても、同じ機械で、ほぼ自動といった感じで作られているのに、歴然と美味しさの違いがでるなんて。
そういえば、レストランで薬膳のコンサルティングの仕事をすると、自分の作る料理に自信を持っている人気店のシェフ達は、レシピを人に見せるのを嫌がりませんでした。「同じレシピを渡しても、私と同じ味は出せないから」と言っていたのを思い出します。
マニュアル+αの「何か」が美味しさをつかさどっているというわけです。それが、プロの仕事なのかもしれません。
原稿の締め切りが近づくと、「店長、今日はいるのかな~」と、外からさりげなーくチェックしてお店に入ります。今月もアイデアがちゃんと浮かんでくれるのも、彼のコーヒーのおかげ。彼の仕事に敬意をはらいつつ、自分の仕事をこなしています。