2004.10.23
「ねり方がまずいと、納豆の味が出ない。納豆を器に出して、それになにも加えないで、そのまま、二本の箸(はし)でよくねりまぜる。糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえすべきである。」と納豆を食べ前に計423回かき混ぜることを薦めた、書家・陶芸家にして、美食家 “北大路魯山人”。漫画「美味しんぼ」の海原雄山役のモデルにもなった人。
このエピソードだけでも、美食への執念が感じられるが。彼は自身が経営する料亭「星岡茶寮」で出す料理の器に満足できず、自分で陶器を造りもてなしたという。
8月から彼の陶磁器の個展がニューオータニ美術館でかかっていたので見に行った。染付け、色絵、磁器から織部、備前まで、全部で90点以上。
織部や備前などの陶器のほうが、磁器の作品より魅力的なものが多いように思った。
個人的にも、備前や伊賀焼き好きだ。家が備前に近かったせいもあって、作家の窯出しがあると時々訪れては、手塩皿や片口など好きなものを買い足していった。おかげで家の食器の“備前率”はやけに高い。夫は食事のたびに私の食事を「縄文の土器食」と呼ぶ。
でも、好きなんだもーん。陶器は同じように形づくられた皿でも、窯の温度や置く場所、炎の向きなどで、全く違うものができあがる。そういう炎まかせなところがいい。いつも新鮮な発見があるのだ。
広くない会場にさんざん粘って1時間半。帰宅して、その日の夜は、家中のお皿大集合!ひとつの料理をいろいろなお皿に盛り変えて違いを楽しんで遊ぶ。
影響されやすい?そうかもしれない・・・。でも、芸術は凡人の日常を変える力をもつのだ。