甘麦大棗湯

2010.10.19

 娘の運動会の後の中医薬大学での講義のテーマは「更年期障害」でした。
 更年期におこるイライラに使う漢方として、後漢の張仲景の書いた「金匱要略」に出てくる処方、「甘麦大棗湯」を試飲してもらいました。
 主に効くのは臓躁(ぞうそう)といわれる症状です。“悲傷して哭いてばかり、ものに取りつかれた様子で欠伸(あくび)が多い”というもの。現代のヒステリー、神経衰弱、躁鬱症などで、心脾両虚や心血虚のタイプに使われます。
 このお薬、実は優しい甘さで美味しいのです。お母さんの精神不安定が子供に影響しているようなときに、親子で一緒に飲んで、効果がでる漢方でもあります。
 使われている生薬は、写真左から、甘草・ナツメ・小麦です。
どれも、日本では、薬品としてではなく、食品分類になるので、安心して使えるのも、長所です。
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 生徒のみなさんに飲んでいただいたら、「おいしい~」「甘い・・・」という声が聞かれました。
私も・・・・と口に運んで、しばらくすると、猛烈な眠気に襲われました。
「みなさん、眠くならない?私、睡魔が来たわ。」というと、
「先生、子供さんの運動会で、一緒に走って、お疲れなんじゃない?」
と、みんな平気そう。
 睡魔を振り払って、レッスンを続けました。
甘麦大棗湯、平易な処方内容なので、あまり注目されない方剤ですが、恐るべき、リラックス効果です。
最近、食材が人間の体を変えていくさまに、驚かされることが多いです。
 自然の中で、人は生まれて、自然によって癒されていく。
その様子をまのあたりにすると、謙虚な気持ちにさせられます。
薬膳を仕事にして、幸せだなと思います。
 


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