2026.5.21
「プラダを着た悪魔2」をご覧になりましたか?
映画の中では、長い伝統を持つ雑誌社が、インターネットの普及によって大きく揺さぶられていく様子が描かれていました。
多くのものがダウンサイジングし、効率化・高速化していく時代の中で、
「文化」とは何なのかを考えさせられる映画でした。
私自身も、紙媒体に関わるひとりです。
6月から8月にかけて、私の著書が3冊刊行されます。
今は「本が売れない時代」と言われ、実際に全国の書店も減っています。
出版社には非上場企業が多いのです。
短期的な利益だけでは測れないものを扱っているからかもしれません。
編集者さんやライターさんたちとお話しすると、毎回感動します。
みなさん、本当に小説や映画、芸術に深く触れていて、
それぞれに繊細な審美眼を持っていらっしゃる。
「誰のどの本が面白かった」
「この雑貨の質感が素敵」
「このカフェの世界観が好き」
そんな会話のひとつひとつに、いつも刺激をいただきます。
昨年出版した『薬膳せいろ蒸し』。

表紙で蒸篭の下に敷かれている黒い板は、実は編集者さんの手作りなんです。
ひとことで「黒」と言っても、色味や質感はさまざま。
料理が美味しく見え、本の世界観にも合うように、何種類もの黒いシートを取り寄せて、木目や光の当たり方まで考えながら作ってくださいました。
出版社に行ったら黒いロール紙がたくさん転がっていて、驚きました。
表紙を開いたページには、ほんのり後ろが透ける、やさしい色合いの和紙も使われています。
「あなた自身を大切にしてほしい」
そんな本のメッセージが、私の文章やレシピだけでなく、
紙の質感や色、デザインすべてから伝わるように。
そこには、紙媒体だからこそのこだわりが込められてます。
私たちは今、時代の変わり目を生きています。
いろいろなものが、あっという間に変わっていく。
新しいものに対応していくことは大切ですし、
私自身、AIにお世話にならない日はないほどです。
でも、変わっていくもの、流れていくもの、消えていくもの。
その中で、静かに沈殿し、凝固していくエッセンスのようなもの。
それが「文化」なのだと思います。
これだけ情報が溢れる時代に、すべてを自分で判断するのは難しいです。
けれど、日本には四季があり、季節ごとの過ごし方や習わしがあります。
その知恵に触れると、私たちの心がどこか安らぐのは、祖先たちが長い時間をかけて育んできた「自然との関わり方」のイメージに触れられるからかもしれません。
軸が整い、日々を過ごすことが少しラクになる。
そんな感覚があります。
書籍制作中の私は、完全に戦闘モードです(笑)
アドレナリン全開で、執筆が終わっても、
「次は何をしよう」
「空いた時間で、新しいことをつくらないと」
と、走り続けてしまいがち。
現代のスピード感に、自分を合わせようとしてしまうんですよね。
そんな中、週末に夫が茨城の自然公園へ連れ出してくれました。
池の周りを散歩していると、陽気に誘われて甲羅干しをしている亀たちに遭遇。
お母さん亀(パパかも)のそばに、小さな赤ちゃん亀がよいしょっと寄っていく。
亀たちは、ただじっとしているだけ。
何かを生産するわけでもなく、効率化するわけでもなく、
ただ、そこにいる。
文化も、芸術も、自分らしさも、
「作ろう」として作れるものではない。
自然に生まれ、ゆっくり積み重なっていくもの。
だからこそ、
自分のリズムを大切にしていきたいですね。