新しい別れ

2018.12.3

実家の母から電話がかかってきました。

「群馬のおうちが売れちゃったって。」

私の母の実家は群馬にあります。

祖父母ともに亡くなり、家を継ぐ人がいないため

少し前から売りに出していました。

「買った人が、年内に入居したいと言ってるらしいから、
もしお別れをしたいなら、すぐ行かないと入れなくなるよ。」

私は兵庫県の生まれです。

大学時代に父と知り合った母は

群馬から関西に嫁ぎました。

そのせいで、私は夏休み、冬休みと長い休みのたびに

群馬の祖父母の家を訪れました。

私が小さい頃の群馬県と兵庫県はとても遠くて

新幹線と在来線をのりついで7時間ほどかかりました。

子ども心にも文化や風土、人の気風の違いが感じ取れて

別の世界を訪れるように感じたものでした。

祖母は自分が学んだいろいろなことを

「いいかい、憶えておくんだよ。」

といいながら話をしてくれるのが

私の楽しみのひとつ。

彼女は私の「特別な人」でした。

私が健康にかかわる仕事につきたいと

思ったきっかけの一つは、祖母の持病のリウマチを

ラクにしてあげたいと思ったからでもあります。

祖母が亡くなったときは、もちろん寂しかったのですが

祖母の家がまだあるということが

私を安心させてくれていました。

人手に渡ると聞いた時

彼女とお別れの時が来たのを感じました。

11月のよく晴れた朝

兵庫から来た母と待ち合わせをして

母のいとこの車で群馬の家に行きました。

いとこがよく管理をしてくれているおかげで

母屋も離れも昔のまま。

蔵の中にはいると

祖母がいつも腰かけていた階段の入り口に

私が小さい頃に来ていた紺色のウールのワンピースがかかっていました。

「お稲荷さんにお供えしてね」

よく言われてお神酒を持っていったお稲荷さんも

きれいに掃除されていました。

赤城山から強い風が吹き下ろしてきます。

冷たくて、湿り気がなく、乾いている。

大切なものにお別れをして

そして、新しい大切なものを作っていく。

 

家族、スタッフ、友人、生徒さんたち。

祖母と私が冬休み、夏休みのたびごとに

つながりを深めていったように

時間と体験を仲間とともに。

前を見て行こう!